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2012年1月23日月曜日

生涯学習

生涯学習と地域社会
10章 学校を通しての地域社会の再生

1、生涯学習の歴史
生涯学習の理念は1965年のユネスコの提案
日本で本格化するのは1981年の中央教育審議会答申「生涯教育について」以降

生涯学習とは
自発的意志に基づき、必要に応じて自己に適した手段・方法を自ら選んで、生涯を通じて学ぶこと
自発性
即応性
選択性
生涯を通じて

その背景
1984の臨時教育審議会第1次答申
生活水準の向上
高学歴可
価値観の高度化、多様化
情報化国際化の流れの中で生涯を通じての学習の必要性
多様な生き方が尊重される社会

地域社会が生涯学習の場になるということはどういうことなのか。
筆者の体験をもとに生涯学習とのかかわりで地域社会のあり方を考えてみたい。

ささやかな学習社会作り
 筆者が発足させた「子育て・教育フォーラム」の紹介
  親同士が悩みや不安を話し合う中で解決の糸口を探る自主的勉強会


子どもの社会問題についての非難がいままでは学校に集中していたが、家庭のあり方が問われるようになっている。
広田照幸は、現在の親たちは完璧な母、完璧な両親を目指してけなげな努力をしていると分析している。

40年ぐらい前までは近所の母親たちが語り合う土壌があったので現在ほど悩まないですんだ。
情報しかない現在では、「公園デビュー」が今風のささえあいの場となっているのだろう。

子育ての継承
参加者の希望 系統立てたプログラム
報告と討論 報告と司会者は持ち回り
必要経費はみんなで分担

30回以上行った勉強会のテーマは
「親の気持ちと子育て」「子どもを伸ばすほめ方しかり方」など
2年目からは「子育てにおける父親の役割」「私が考えるしつけと家庭教育」というテーマでシンポジウムをおこなった。

この「子育て・教育フォーラム」は自主的なボランティアによって運営され、保育もボランティアグループから派遣されている。

3年間を振り返ると多くの知恵を全体の共有財産にすることができた。子どもをとりまく環境が悪化する中で、この会の果たす役割はますます大きくなっている。

この活動は当初半官半民の形態で始められた。
市からは自主性も尊重され、費用面、施設面などでのサポートがあったが、2年目からは市の方針転換がありそのような関係に陰りが生じる。
行政には社会から本当に求められることを受け止め、それに応えてくれることを望みたい。

しかし行政に関係なく、母親の必要性から生じたこの会はこれからも続いていくだろう。
1999年に文部省が出した文章では、地域で子どもを育てる体制作りなど、家庭教育を支える取り組みが既になされていることを強調している。

市の当初の姿勢はこの文章に添うもので、行政と地域は力を合わせ子どもの環境作りに勤めていくべきである。
そのときの行政の姿勢として、地域の自主的な活動をみとめ育てていく懐の広さが必要だろう。

2 放送大学
放送大学はまさに生涯学習の場である。
筆者は放送大学の面接授業を担当して4年になる。そのなかで学生たちが年齢に関係なく学ぶ喜び、誇り、価値をかみしめている姿に接してきた。
1999年の面接授業で筆者は生涯学習審議会答申を取り上げた。
答申では生涯学習のあるべき姿として

誰もが社会の中で生き生きと自分を生かすことができるようにするために
・いつでもどこでも学ぶことができる、
・その成果を生かすことができる
・自分が本当に望むことを選択できる。
・やり直しのきくゆとりのあるシステム

この答申の内容は学生たちにとって激しく心を揺さぶるものであったようだ。

生涯学習審議会答申では
あらゆる人が学び直して再チャレンジできるように
この答申は多くの人に夢や希望を持たせるものではある。

放送大学には学歴社会の中で疎外され過去に鬱積した思いを持っている
学生が多い。
答申では資格を活用して社会参加が進めば自己実現だけでなくあらたな 学習意欲を生み出すとあり

この答申を実現するには多くのハードルがある。
学習機会の拡充とその結果をを生かせる社会体制を整えるのことが求められる。 また放送大学院の実現への取り組みも期待される。

3、自治会活動の意義は何か
地域をどのように作り上げていくかは時代を越えた大きな課題である。
筆者が地区長をしている自治会では住民の寄付によって自治会館が完成した。
その取り組みの中で学ぶことも多かった。
地区長として意義や夢を話し、寄付集めをしてきたが期待したよりも多くの人
耳を傾け、寄付金を集めることができた。
自治会館は地域の財産としてさまざまに役にたっていくだろう。
東京都区部という都会でも思ったよりも地域社会が残っているかもしれない。
相互扶助の輪はどの地域でも作れるのだと実感できた。

筆者は30年以上前に下水道を自費で作る自治体活動にかかわったことがある。
下水道設立実行委員会は一人一人に必要性を訴え、勉強を重ねつつ5年かけて事業は完成した。
1970年代の生活の諸問題解決のための多様な住民運動の流れに添って
いたと思われる
こうした住民運動は個別課題の解決から「地域づくり」へと発展してきた。
下水道の取り組みは地域住民に大きな自信とほこりを産み、下水道設立組合が役割を終えた後も、地域の協力の輪は消えなかった。
校区の小学校でも一目置かれ教育についても期せずして、社会的連帯感や権利意識が生まれた。
社会参加型、問題解決型の学習社会とはつまりこういうことであろう。



補章

生涯教育と資格試験

2000年2月日弁連が「法学検定試験」という新しい資格がうまれた。
日本では毎日のように新しい資格が生まれている。
多くの人が資格のため野本を買い、資格試験予備校に通っている。
日本全体が資格社会化している。

生涯学習とのかかわり
生涯学習への動機となる。
生涯学習の成果を顕在化させる
機能を持つ

1、資格の分類
資格を明確に定義することは難しい
辞書の定義からは運転免許など資格がないと一定の行為をすることが禁じられたものというイメージが浮かび上がる。
またもう一つ、実用英語検定や簿記検定など、行為をするために必ずしも必要では
ないという資格もある。
明確な定義はないが実施機関、国の関与を指標に分類すると
以下のようにわけられる
1,国家資格
法律や命令に基づき設置
国またはその指定機関が実施
運転免許、司法試験など
2,公的資格(広義)
財団や社団などの公益法人が実施、認定する
実用英語検定、日本語教育能力検定などの
官公庁の認定している資格を狭義の公的資格
証券アナリストやソムリエなど
公益法人が独自に行っているものを準公的資格と細分することもある。

3,民間資格
民間の団体が実施
ファイナンシャルプランナー、一太郎検定など。

2、資格の効用
生涯学習の成果を確認する手段として資格、資格試験が注目を集めている。
生涯学習審議会の答申では、学習の成果を資格に結びつけることで、社会も
その学習成果を活用しやすくなる。また学習者も成果を社会的に確認でき
さまざまな活動に参加する中で、新たな課題をみつけ学習する刺激になると指摘している。
実際、資格取得への意欲は高く
筆者の調査によれば女子大学生の3/4が在学中に資格を取得、または検討している。足立区の世論調査でも職業上の技能、知識との関係で生涯学習に取り組んでいる
と答えたものは、28.1%と同様の結果が出ている。
しかし、実際に学習に取り組む層は、男性が多く年代も20代から40代に集中している。このことから就職後は女性の資格取得への意欲が低下していることがうかがえる。
この原因として女性が生涯学習として職業と関係ないものを選んでいる、または職業生活の中でその必要性を感じていないという2つの可能性が考えられる。
後者であれば性別役割分業的な構造の残存を示しているといえる。
3、教育訓練給付金

優良企業が次々に倒産し、リストラや、年棒制への移行など終身雇用制が崩壊つつある。その中で転職も買手市場一色になり、少しでも有利な条件を求めて資格取得を目指す層が増えている。その不況の中、資格産業は盛んになっている。
労働省は従業員の資格取得を補助する教育訓練給付制度をスタートさせた。
労働者による能力開発、雇用の安定、再就職の促進をはかることを目的
としており、雇用の流動化を前提につくられたことがわかる。
教育訓練恐怖制度の概要
雇用保険の一般被保険者(元をふくむ)
受講開始までに1つの事業主に5年以上つとめた。
一般被保険者資格を喪失してから1年以内

この条件を満たすものが指定の教育訓練を修了した場合
費用の80%をハローワークが支給する

情報処理、簿記、など仕事に役立つ講座が2000年9月現在1万2千指定されている。

4、資格社会という幻想
不況の嵐が吹き荒れる中、資格は不況に強いという言葉は魅力的な響きを持っている。
しかしそこに悪徳商法という大きな落とし穴がある。
悪徳商法は教育訓練給付金が利用できるなどの錯覚をおこさせ、法外な値段のテキストを売りつける。
最近は女子大学生に対して「就職に有利」と勧誘する傾向があり、ひっかかってしまう学生も多い。生涯学習でもクーリングオフ制度など消費者教育の充実が求められる。

また、資格試験の合格を最終ゴールにしていると思われるような人もいるが
資格を持っているということとその資格を使いこなすことはまったく別次元の問題である。資格取得はそれが活用されて初めて意味を持つのである。


資格競争での新たな敗者をうみだす。

無力感の学習


地域の問題を解決するための学習

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