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2012年2月23日木曜日

星座にまつわるエトセトラ

言葉が「もの」をつくるという考え方があります。これは私達の常識からすると全く逆に思えます。「もの」が在るから名前が付けられるのであって、名前が付いてなくても「もの」は在ると考えるのが普通です。
 しかしちょっと考えてみて下さい。星座を知っている人にはオリオン座は確かにそこにありますが、知らない人には星がバラバラに見えるだけかも知れませんし、そこにまったく違う形を見つけるかも知れません。このことは言葉がオリオン座という「もの」を造ったと言えるのではないでしょうか。
 言葉はイメージと結びついています。私たちは見える物や聞こえる物、感じたことからいろいろなイメージを作り出して、名前をつけることで世界を理解してきました。その見たもの、聞いたことが時計、テレビ、木、動物などならばそのイメージも具体的で個人の意志の入り込む隙間は無いように思えます。
そのため「外にあるであろう世界」と「自分が名付けることで理解している世界」を同じ物と考えがちです。しかし世界を理解するには何らかの規則が必要です。私達は規則なしに世界を理解することは出来ません。むしろ理解とは世界を頭の中の規則に当てはめる事であると言った方がいいかもしれません。
 前置きが長くなりましたが、これから色々な星座の名前、星座の形、星座の大きさを比べてみることで、その規則がどんな物なのかを考えてみたいと思います。
まあそうは言っても民族によって星の見方は様々なのでとりあえず日本の星座と88星座を比べてその共通点と違いを明らかにしたいと思います。

1、星座の名前について

 日本にも実に多くの星の呼び名があります。西洋の呼び名のように神話と結びついた壮大なものではありませんが、昔の人の暮らしぶりや星に寄せる思いの感じられる良い名がたくさんあります。
日本の呼び名は昴のように全国的に広まった名もありますが、ほとんどは方言の形で各地方に伝えられた物です。しかしその星の見方は独自の文化を持つアイヌ民族をのぞくとほとんど同じです。沖縄の星は発音こそ日本のものとかけ離れていますが基本的な星の見方は同じです。アイヌの星には伝説と結びついた名前が多くあります。動物や人に例えた名が多いのも違います。こうした星の見方は南方の民族やアメリカインディアンとよく似ているそうです。アイヌの起源を考える上で興味深いことです。
 星の呼び名はだいたい「道具」「動物」「人」「想像上の動物」「星の特徴を表した名」に分けられるように思います。最後の星の特徴を表した名というのは「三角座」、「南十字」、日本の「三ツ星」(オリオン座)、「二つ星」(双子座)、「赤星」(アンタレス)などのように具体的な物ではなく特徴をそのまま表した呼び名です。
88星座をこの分類で分けると次のグラフのようになります。


88星座では動物の星座が半分近くを占めています。ほとんどのものが神話と結びついているのが日本とは違うところです。日本では動物の名は馬の面星(プレアデス星団)猫の目、犬の目(双子座)ガニノメ{蟹の目}(サソリの尾)など数えるほどしかありません。
 次に多い道具にたとえた名はもっと少ないと思っていましたが意外に多いので驚きました。日本の星でも実際に数えていませんが結構あります。ただ農機具や漁師の使う物が多いのに文化の違いが現れています。88星座の中でも彫刻室、彫刻具、望遠鏡、顕微鏡、祭壇、などはなじみがなくずいぶん変な星座があるもんだと思いました。日本には枡型星(ペガスス座)、いかり星(カシオペア座)、羽子板星、釣り鐘星(プレアデス星団)、ひしゃく星、舵星(北斗七星)太鼓星(かんむり座)などがあります。
 3番目に多い人を表した星座はそれぞれの星の見方の違いがはっきりと現れています。日本では西洋の星座のように人の姿をそのまま星の並びとして表すのではなく、七夕の織り姫と彦ぼしのように位置関係を人にたとえています。七夕の伝説は中国から伝わったものですが、同じような見方をしてオリオン座の三ツ星をはさんだ、リゲルとベテルギウスを源氏星、平家星と呼ぶ地方もあります。ほかに人に例えた星は相撲取り星(蠍座の二重星)、夫婦星(双子座)などがあります。また西洋の神話によくある、神が〜を天にあげて星座になったという言い伝えは日本には、ほとんど見られません。日本の星は伝説よりも生活に結びついているからでしょう。
 「特徴をそのまま現した名」は88星座にはあまりありませんが、日本にはたくさんあります。先に書いた例のように数を名付けた物も多くあります。
 このように名前から星座を見てきましたが、星の名前にその民族性や生活習慣が強く現れているのが感じられたと思います。これを民族学的にもっと詳しく調べると面白そうです。また88星座を今回はひとまとめに扱ってきましたがその起源は1つではありません。そこまで詳しく調べるのが面倒だったのでこうしたのですが、まあだいたい大丈夫だったと思います。
日本の星については野尻抱影氏の「日本の星」という本を参考にさせていただきました。興味を持った人はぜひ読んでみて下さい。星の神話については書きませんでしたが野尻抱影氏は神話の本も多く書かれているので読んでみて下さい。何となく「日本の星』を紹介しただけのような気もしますがそれはそれでいいでしょう。
星座の大きさと形の比較はまた機会があったら書いてみたいと思います。

これは私が入っている天文同好会の会報に書いた文です。題名はその頃はやっていた曲をもじってつけました。序文に書いてあるように星座の形や大きさについても書こうと思っていたのですが書いていません。名前についても比べ方がおざなりになってしまいましたが、もっと深くいろんな方向から調べると面白そうです。いろんな文明の星座を集めて,星座の形をパターンごとに分類し,認知心理学的に比較したり、文字と星座に関連がないかなどアイデアが大きく膨らみ過ぎて私の手におえなくなってしまいました。着想はいいと思うので面白そうだと思った人は調べてみてください。

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