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2012年2月5日日曜日

敵は制度、味方はすべての人間

埴谷雄高
敵と味方
昭和文学全集
p46

ヒポクラテス
「過去を述べ、現在を診断し、未来を予告する。このことを実行せよ。病気に関しては、つぎの二つを習慣化せよ−手助けすること、しからずんば、少なくとも無害なことをせよ。技術は三つの要素をもっている。すなわち、病気、患者、医師。医師は技術の召使いである。患者は病気との戦いで医師と協力しなければならない。」

かつては人を殺すことが讃えられるべき勇者の業であったが、いまそれは無理論と無能の証明となった。何故なら、たとえ不可能と見えるほど困難にせよ,医師にとってすべての患者がやがて癒されるべき相手であるがごとく、私達にとっては内側と外側の古い制度に引きずられている誰もが、やがてともに歩むべき味方なはずだからである。敵は制度、味方はすべての人間、そして、認識力は味方の中の味方、これが絶えざる死の顔の蔭に隠れて私達のあいだに、長く見つけられなかった今日の標語である。

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